【第8回フィールドワーク】2022年5月 首都圏のインフラを歩く

時空の移動を伴うフィールドワーク。それはつねに何らかの問いをその内側に宿す。

水となって荒川を下る3月のフィールドワークを終えて、魚の骨のように喉元に引っかかっていたことがある。赤羽まで流れてきた荒ぶる川の水が岩淵水門によって制御されたおかげで、その下流の22キロの荒川放水路の流域には、水害の心配が少なく、社会経済活動を安定的に行うことができる空間が出現した。道路や鉄道が通る鉄橋が渡され、周辺にはビルやマンションが建てられ、宅地や町がつくられて、荒川水域には1千万人近くの人々が住む空間が実現したという。 人の手によって建造されたインフラ構造物が、巨大人口が住まう空間を可能にしたわけだ。 

”インフラとは何か?”というのが、ひっかかっていた問いであった。その問いに導かれて、今回のフィールドワークで我々はまず、首都圏外郭放水路を訪れた。 

過去に水害に見舞われてきた中川や綾瀬川の流域は皿状になっていて水が溜まりやすい。 首都圏外郭放水路とは、これらの地域に溜まった水を江戸川に放水し、水害を予防するために建造された巨大インフラである。全長6.3km、地下約50mの地点に設けられた世界最大級の地下放水路は、1993年に着工し総工費2300億円をかけて2006年に完成した。 あたりの諸河川から水を取り込む円筒状の立杭が5つある。地下トンネルで繋がれている5つの立杭のうち第1立杭を見学した。それは直径30m、深さ70mもあり、下を見ると足がすくんだ。 

地下トンネルから流れてきた水を江戸川に流すための調圧水槽には、高さ18mの柱59本がそびえており、それは「地下神殿」とも呼ばれる巨大な建造物だった。 

現代の土木工学の粋を集めた巨大なインフラ構造物の異容な佇まいに圧倒された後、その地域に広がる水管理、とりわけ農業という生業を可能にしたインフラを歩く旅に出かけた。8代将軍吉宗の時代に徳川幕府は、利根川の流れから85キロに及ぶ水路を開削し、水田に水を潤し、物資を江戸市中に運ぶために、「見沼代用水」をつくった。 その灌漑農業用水を利用する田んぼは、田口を見沼代用水側に、田尻を芝川加田屋川に排水するようにつくられて、見沼には、短冊状の田んぼが幾重にも並ぶようになった。 

 

見沼田んぼ」は、その後、戦後の高度成長期になると、しだいに開発の波にさらされるようになった。しかし、埼玉県を直撃した1958年の狩野川台風以降には一転して、開発は規制されるようになった。見沼田んぼが洪水被害の軽減に役立ったと考えられ、その一方で、その地域には浸水被害が見込まれるとされ、農地から宅地への転用が規制されるようになった。「見沼3原則」 が唱えられた結果、見沼には、東京近郊最大の緑地が残されることになった。 

 

広大な田んぼやその周辺地では現在、鳥や虫が鳴き、野草が咲き乱れ、野生動物が行き交う。見沼代用水の周辺を歩きながら、我々は、日本の社会構造や産業構造の変化や近未来、農や食をめぐる課題などについて道々話し合った。 

さいたま新都心駅近くで我々は、地面から見上げると、「ザ・インフラ」と呼びたくなるような高速道路の高架下にぶつかった。 首都高の下には、見沼たんぼ首都高ビオトープが、柵に囲われて広がっていた。そこでは、逆に人間が疎外されていた。アナ・チンによれば、生の絡まり合いがあたかもないかのように他(種)との関わりを持たずにいることが疎外である(『マツタケ』)。そこでは、人間が疎外されて、複数種の絡まり合いから取り除かれてしまっているのかもしれない。

人の技術を結集してつくられた強度のインフラ構造物の下に、本源的な「自然」を創り出すためにビオトープが設けられる。 ビオトープは、首都高の敷地内での試みであるのかもしれないが、打ち続く車の騒音により、動物たちや鳥たちにとっては、必ずしも"サウンドスケープ"(「健全な音景観」)にはなってないはずだ、という感想がふと口をついて出た。

 

インフラを通して見た首都圏の景観は、人間が建造したインフラによって生み出されたフェラル(野良な)生態を検討する、「人新世」という問題提起以降の人類学の課題へとつながっている。→第19回読書会にて検討予定。

第20回読書会 アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』(VdCによる「あとがき―不穏な問い」を含む)を読む

本読書会は、本研究会の一メンバーの書いた『図書新聞』の「22年上半期読書アンケート」の評をもって終了したことにいたします。悪しからず。

日時:2022年6月20日(月)20:00~ 6月13日から日程変更になりました
形式:zoom

人権活動家兼環境保護活動家クレナッキによる『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア  人新世という大惨事の中で』(エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロの「あとがき―不穏な問い」を含む)中央公論新社、2022を読みます。

本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、6月11日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

 

 
 

第19回読書会 Anna L. Tsing, Jennifer Deger, Alder Keleman Saxena and Feifei Zhou(eds.) Feral Atlas: The More-Than-Human Anthropocene.を読む

日時:2022年6月6日(月)20:00~
形式:zoom

今世紀初頭の人新世という問題提起を起点として始まったマルチスピーシーズ研究の現在地を知るために、 Anna L. Tsing, Jennifer Deger, Alder Keleman Saxena and Feifei Zhou(eds.) Feral Atlas: The More-Than-Human Anthropocene. Stanford University Press, 2020を読みます。

「フェラルな(野良な)」生態とは、人間によって建設されたインフラによって促されて生み出された生態のこと。それは、今では人間の手に負えないほど発展して、広がってしまっている。フェラル・アトラスは、このようなインフラの影響こそが「人新世」の正体であると主張する“feral” ecologies, that is, ecologies that have been encouraged by human-built infrastructures, but which have developed and spread beyond human control. These infrastructural effects, Feral Atlas argues, are the Anthropocene.
 
というのが、人類学者アナ・チンの影響下にある、とても強力かつ有望な研究ユニット、フェラル・アトラスのアイデアです。それは、チンのエポックメイキングな研究書『マツタケ』以降に、マルチスピーシーズ人類学の力動を方向づける一つの流れであると評価することができるでしょう。
 
本書は、スタンフォード大学の書籍のデジタルプロジェクトの一部で、その内容は、ホームページ上で公開されていて、誰でも読むことができます。

この研究会は、あらかじめ文献を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。メールを送ってもらえれば、今回どのパートを取り上げるのかをお知らせいたします。また希望に応じて、日本語の補助資料も事前配布いたしますので、その旨お伝えください。

氏名・所属・関心を明記の上、6月2日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
zoom URLは、開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

 

 Cover of Feral Atlas by Edited by Anna L. Tsing, Jennifer Deger, Alder Saxena Keleman and Feifei Zhou

第18回読書会 Dale R McCullough et al. Sika Deer―Biology and Management of Native and Introduced Populationsを読む 

日時:2022年5月30日(月)20:00~
形式:zoom

東アジアの重要な生物種であるニホンジカ (Cervus nippon)に関して、Dale R McCullough, Seiki Takatsuki and Koichi Kaji(eds.) Sika Deer―Biology and Management of Native and Introduced PopulationsSpringer Nature, 2009のうち、序論と奈良の鹿に関する章を読みます。

文献を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。
文献入手に関しては、早めに相談ください。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、5月28日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

 

 

第17回読書会 港千尋『風景論』を読む 

日時:2022年5月23日(月)20:00~
形式:zoom

前回のサウンドスケープを主題とする本に続いて、写真家によるランドスケープ論として、港千尋の『風景論:変貌する地球と日本の記憶』中央公論社を読みます。
 
本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、5月21日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

Amazon.co.jp - 風景論-変貌する地球と日本の記憶 (単行本) | 港 千尋 |本 | 通販

第16回読書会 バーニー・クラウス『野生のオーケストラが聞こえる』を読む  

日時:2022年5月12日(木)20:00~
形式:zoom

音の世界を人間を超えて捉えることはいかにして可能か。今回は、バーニー・クラウスの『野生のオーケストラが聞こえる:サウンドスケープ生態学と音楽の起源』(伊達淳訳)みすず書房、を読んで、探ります。
 
本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、5月10日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

野生のオーケストラが聴こえる : サウンドスケープ生態学と音楽の起源 - 東京 下北沢 クラリスブックス  古本の買取・販売|哲学思想・文学・アート・ファッション・写真・サブカルチャー

第15回読書会 Atsuro Morita"Multispecies Infrastructure”/猪瀬浩平『分解者たち』を読む

日時:2022年5月9日(水)20:00~
形式:zoom

タイのチャオプラヤ・デルタの環境インフラストラクチャーを扱った、 Atsuro Moritaの"Multispecies Infrastructure: Infrastructural Inversion and Involuntary Entanglements in the Chao Phraya Delta, Tailand”, ETHNOS 84(4): 738-757, 2017. と、東京近郊の広大な緑地での農的経験を取り上げた、猪瀬浩平(写真:森田友希)『分解者たち:見沼田んぼのほとりを生きる』生活書院を読みます。
 
論文を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、5月7日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

論文が入手できない場合は、事前に相談ください。

*関連FWの申し込みは、4月30日までです。

 

 

【第7回フィールドワーク】 2022年4月 静岡中部の茶をめぐるマルチスピーシーズなランドスケープ

新茶摘みの季節、我々は静岡県中部を歩いた。まずは、ふじのくに茶の都ミュージアムを訪れた。茶を知るための必要な情報が、そこにはあった。

生葉はすぐに加熱すれば緑茶、少したってから加熱すると青茶(ウーロン茶)、長い時間を置いてから加熱すると紅茶となり、それらはそれぞれ酸化による発酵度の低さ・高さに対応している。

茶の原産地の雲南から世界に広がった茶は、野菜が不足するモンゴルでは固形茶を煮出して、山羊のミルクを加えた乳茶の習慣を生み、タイやミャンマーでは、漬物として食べられるようになるなど、各地で茶をめぐる多様な飲食文化を生んだ。

日本には、鎌倉時代の禅僧・栄西によってもたらされ、その後、中国の喫茶習慣の影響を受けながら、独自の発展を遂げてきたのである・・・・・・

今回我々が、特に焦点をあてたのは、世界農業遺産にも登録された、静岡県に見られる「茶草場農法(ちゃぐさばのうほう)」である。茶草場とは、ススキやササなどの草が、人の手によって管理されている草地のことである。

刈り取ったそれらの草を茶畑の畝間に敷くことで、茶園の保温・保湿につながり、土中の微生物を繁殖させて土壌改良を促進し、雑草の繁茂を抑制するなどの効果があるとされる。そのことで、茶の香りや味を高めることにもなるという。

毎秋、茶草場の草刈りが行われ、そこに生息する植物にも光が届くのである。そして、そのことにより、茶草場は植物だけでなく、虫や動物などを含め、多様な生命が息づく場となりえている。つまり、人の手で茶草場が管理されることによって、人にとって高品質の茶とその文化が生み出されるだけでなく、多種(マルチスピーシーズ)の生もまた可能となってきたのである。

我々は、そうした静岡中部における、モア・ザン・ヒューマン(人間以上)のマルチスピーシーズな世界についてあれこれ語り合いながら、往復2時間かけて、掛川市の東山地区の粟ヶ岳を登り降りた(登りは、けっこうきつかった)。

その後、静岡県立中央図書館にも立ち寄って、文献資料を調べて、東京に戻った。

第14回読書会 Sarah Besky "Exhaustion and Endurance in Sick Landscapes”を読む

日時:2022年4月27日(水)20:00~
形式:zoom

インドの茶プランテーションの労働を扱った、人類学者Sarah Besky の"Exhaustion and Endurance in Sick Landscapes: Cheap Tea and the Work of Monoculture in the Dooars, India".を読みます。以下の論集に、第1章として収められています。How Nature Works: Rethinking Labor on a Troubled Planet. Edited by Sarah Besky & Alex Blanchette, 2019, University of New Mexico Press. 

ファシリテータ 張威(立教大学大学院)
 
論文を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。
論文が手元にない場合は、事前にお申込み下さい。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、4月25日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

 Amazon | How Nature Works: Rethinking Labor on a Troubled Planet (School of  Advanced Research Advanced Seminar) | Besky, Sarah, Blanchette, Alex |  Cultural


【第6回フィールドワーク】 2022年4月 鶴見川をくだる

総合治水に取り組んできた鶴見川を取り上げた『生きのびるための流域思考』を読んだ。水害に苛まれた流域の人々を助けるだけでなく、自然をよく知り、保全し、持続可能な未来を築くための志に貫かれたその自然管理実践には、非の打ち所がない。

その本を参考にしながら、我々は今回、結果として、人新世という問いを背景として、人間が何をやっている(きた)のか、という問題意識を持ちながら、鶴見川をくだって行ったことになる。

京王相模原線南大沢駅から歩いて45分ほどで、鶴見川源流の森にある源流の泉に辿り着いた。鶴見川はここから東京湾まで42.5キロを流れているとされる。

上小山田みつやせせらぎ公園では、昨年から蛍がいなくなったという話を聞いた。幼虫の餌となるホオの葉が、ある開発事業の影響で川面に落ちなくなったのかもしれないという。近くでは、ネズミホソムギなどの花粉症を誘発する種を抑制するために、ノカンゾウやヤブカンゾウが植えられている場所があった。鶴見川の淀みには、鯉が泳いでいた。

山の端橋、新竹ノ内橋を越え、我々は先を急いだ。ここからずっと護岸がしっかり築かれているということが、印象に残っている。

町田市の図師を越えると、川べりには鷺。たくさんの生きものたちに会った。

恩廻には、洪水時に水量のピークをカットする治水施設である恩廻遊水池があり、地下に10万トンの洪水を貯留できるという。

小机では地域防災施設鶴見川流域センターを訪ね、「洪水時水マネジメント」「平常時水マネジメント」「自然環境マネジメント」「震災・火災時マネジメント」「水辺ふれあいマネジメント」という5つの水マスタープランに関わる展示を見学した。地下が遊水池になっている日産スタジアム(横浜国際競技場)にも立ち寄った。

特に鶴見川とは直接の関係はないのかもしれないが、横浜市の鶴見川の支流に位置する町の整然たる佇まいに我々は印象づけられた。人間の使い勝手や快適さのためにデザインされたであろう都市空間。自然は人が用い、人の目に心地よく整えられていた。そこに、自然が息づいているのだ。逆に、そこには攪乱的な要素のようなものはないように思われた。こうした見取り図は、ことによると、鶴見川流域で、人の観点から、人のために、河川とその周辺地が整えられることとパラレルなのかもしれないと、我々は話し合った。

鶴見は、鶴見川河口近くに開かれた東海道の宿場町であった。京浜東北線鶴見駅を降りて徒歩で10分ほどで、鶴見川に辿り着いた。東京湾の上げ潮時には、海水が侵入する感潮河川である鶴見川からは、ほんのりと潮のにおいが漂ってきた。ウミネコが、我々の到着を迎え入れてくれたかのようだった。鶴見川の川幅は、とても広くなっていた。

生麦河口干潟には、鶴見川の源流から42.5キロの看板が立っていた。

メンバーによるnote記事も参照のこと。

第13回読書会 ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター『反逆の神話』を読む

日時:2022年4月25日(月)20:00~
形式:zoom

体制への反逆を唱えたカウンターカルチャーの思想を今一度捉え返すために、ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポターの『反逆の神話[新版]:「反体制」はカネになる』を読みます。
 
ファシリテータ 保坂昇寿(写真家)

本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、4月23日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

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【第5回フィールドワーク】2022年3月 水となって、荒川をくだる

3月下旬、東京に雪が降った翌朝、私たちは、奥秩父・入川渓流釣り場から入川林道を歩き、赤沢出合を越えて、荒川の起点碑を目指した。途中、シカやサルたちに遭った。


雪は深いところで、くるぶしあたりまであった。

軽装備の私たちは、雪に覆われたガレ場にとりついたが、それ以上進むのを断念し、水の流れる音を聞きながら、そこで「水になった」。

 

水となった私たちは、清流となって山あいを流れ下った。


やがて、二瀬ダムによって秩父湖を生み出すとなった秩父ダムに辿り着いた。


途中、江戸中期に「お犬様」信仰が広まった三峯神社に参った。奥宮がある妙法ヶ岳は、うっすらと雪に覆われていた。


かわはく(埼玉県立川の博物館)では、私たちが流れ、人間界ではそう名づけられている「荒川」をめぐる展示がなされていた。屋外に、甲武信ヶ岳にある源流から東京湾までの河口に至る流れが1000分の1に縮小され、パノラマ展示されているのは圧巻だった。また、屋内では、木材の運搬のために使われた鉄砲堰や、自然堤防の上に居を構え、水害に備えるために食料や資産を保持するために建てられた水塚などの展示が、水(荒川)と人間の関係を知る上でとても示唆的だった。


私たち水は、人間にとって、とりわけ、1000万人ほどの首都圏の人口にとってとても大切だと考えられていて、私たちの流れを管理するために必要だと考えられている、荒川水系第二調整池の建設がいままさに進められているところだった。

第二調整池に先行して1997年に作られたのが、彩湖あるいは荒川第一調節池である。それは、首都圏に住む人たちに水を届ける利水機能、首都圏を洪水から守るための治水機能を担っている。人間とは、力を合わせて、とてつもないことを成し遂げる種に違いない。


1910年(明治43年)に、私たちの祖先の水、すなわち荒川が氾濫し、流域の人々に甚大な被害をもたらした。それを機に、下流域の改修計画が策定された。22キロにわたって、「荒川放水路」と呼ばれる人工の川が作られた。その起点が旧岩淵水門であり、その後老朽化によって、それは岩淵水門に立て替えられている。岩淵水門の隣の敷地にある荒川知水資料館では、荒川放水路の建設により、川岸が作られ、水路が掘られ、東京のインフラが整備され、流域が開発されていった様子が分かりやすく説明されていた。

赤羽の岩淵水門の近くの八雲神社には、私たち水を司る水神が祀られていた。

京成線四ツ木の川べりには、荒川の上流から運ばれてきたごみが流れ着いている様子が確認できた。

そして、起点から173キロを経て、水である私たちは東京湾へと流れ着いたのである。


 『森は考える』だけでなく、『川は考える』も書かれなければならないだろう。








第12回読書会 岸由二『生きのびるための流域思考』を読む

日時:2022年4月11日(月)20:00~
形式:zoom

鶴見川を対象に、流域思考を扱った、岸由二『生きのびるための流域思考』を読みます。
 
本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、4月9日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

 生きのびるための流域思考 (ちくまプリマー新書) | 岸 由二 |本 | 通販 | Amazon

第11回読書会 アナ・チン『マツタケ』を読む

日時:2022年4月4日(月)20:00~
形式:zoom

人類学だけでなく、周辺学問・領域に大きな影響を及ぼした、アナ・チン『マツタケ 不確定な時代を生きる』を読みます。
 
ファシリテータ 張威(立教大学大学院)

本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、4月2日までに

hosakanorihisa@gmail.com
5057125@rikkyo.ac.jp

までリクエストしてください。
開催時間前に、指定のメールアドレスに送ります。

 Amazon.co.jp: マツタケ――不確定な時代を生きる術 : アナ・チン, 赤嶺 淳: Japanese Books

第10回読書会 保坂直紀『海洋プラスチック』を読む

日時:2022年3月21日(月)20:00~
形式:zoom

ごみをめぐる問題のうち、今回はプラスチックごみを取り上げて、保坂直紀『海洋プラスチック 永遠のごみの行方』を読みます。

本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます。

zoom URLは、氏名・所属・関心を明記の上、5057125@rikkyo.ac.jpまでリクエストしてください。

海洋プラスチック 永遠のごみの行方 (角川新書) | 保坂 直紀 |本 | 通販 | Amazon

第72回読書会 木田元『反哲学史』を読む

日時:2026年9月7日(月)20:00~  形式:zoom 木田元『反哲学史』講談社学術文庫(2000年)を読みます。 本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。 氏名・所属・関心を明記の上、9月5日(土)までにzoom URLを、以下までリ クエストしてくだ...