【第6回フィールドワーク】 2022年4月 鶴見川をくだる

総合治水に取り組んできた鶴見川を取り上げた『生きのびるための流域思考』を読んだ。水害に苛まれた流域の人々を助けるだけでなく、自然をよく知り、保全し、持続可能な未来を築くための志に貫かれたその自然管理実践には、非の打ち所がない。

その本を参考にしながら、我々は今回、結果として、人新世という問いを背景として、人間が何をやっている(きた)のか、という問題意識を持ちながら、鶴見川をくだって行ったことになる。

京王相模原線南大沢駅から歩いて45分ほどで、鶴見川源流の森にある源流の泉に辿り着いた。鶴見川はここから東京湾まで42.5キロを流れているとされる。

上小山田みつやせせらぎ公園では、昨年から蛍がいなくなったという話を聞いた。幼虫の餌となるホオの葉が、ある開発事業の影響で川面に落ちなくなったのかもしれないという。近くでは、ネズミホソムギなどの花粉症を誘発する種を抑制するために、ノカンゾウやヤブカンゾウが植えられている場所があった。鶴見川の淀みには、鯉が泳いでいた。

山の端橋、新竹ノ内橋を越え、我々は先を急いだ。ここからずっと護岸がしっかり築かれているということが、印象に残っている。

町田市の図師を越えると、川べりには鷺。たくさんの生きものたちに会った。

恩廻には、洪水時に水量のピークをカットする治水施設である恩廻遊水池があり、地下に10万トンの洪水を貯留できるという。

小机では地域防災施設鶴見川流域センターを訪ね、「洪水時水マネジメント」「平常時水マネジメント」「自然環境マネジメント」「震災・火災時マネジメント」「水辺ふれあいマネジメント」という5つの水マスタープランに関わる展示を見学した。地下が遊水池になっている日産スタジアム(横浜国際競技場)にも立ち寄った。

特に鶴見川とは直接の関係はないのかもしれないが、横浜市の鶴見川の支流に位置する町の整然たる佇まいに我々は印象づけられた。人間の使い勝手や快適さのためにデザインされたであろう都市空間。自然は人が用い、人の目に心地よく整えられていた。そこに、自然が息づいているのだ。逆に、そこには攪乱的な要素のようなものはないように思われた。こうした見取り図は、ことによると、鶴見川流域で、人の観点から、人のために、河川とその周辺地が整えられることとパラレルなのかもしれないと、我々は話し合った。

鶴見は、鶴見川河口近くに開かれた東海道の宿場町であった。京浜東北線鶴見駅を降りて徒歩で10分ほどで、鶴見川に辿り着いた。東京湾の上げ潮時には、海水が侵入する感潮河川である鶴見川からは、ほんのりと潮のにおいが漂ってきた。ウミネコが、我々の到着を迎え入れてくれたかのようだった。鶴見川の川幅は、とても広くなっていた。

生麦河口干潟には、鶴見川の源流から42.5キロの看板が立っていた。

メンバーによるnote記事も参照のこと。

エドワード・ポズネット『不自然な自然の恵み』を読む

日時:2024年6月21日(金)20:00~  形式:zoom   エドワード・ポズネット『不自然な自然の恵み 7つの天然素材をめぐる奇妙な冒険』桐谷知未訳、みすず書房(2023年)を読みます。 本を読んだ人であれば、どなたでも参加できます(無料)。 氏名・所属・関心を明記の上、...